手すりの取り付けについて。

 手すりの太さや材質、取り付けの位置など、手すりに関する記述は、ネット環境を含め多々存在しておりますが、経験上でお話しすると「利用する方によって違う」という事をご理解頂きたいと思います。

手すりに関しては、福祉住環境コーディネーター等の教科書通りに通用する件もあれば、真逆の場合もあります。利用する方の状態(動き、住環境、家族構成等)によって臨機応変なプランニンングが大切です。今日では「バリアフリー」に関する参考資料がたくさん出回っていて、ケアマネジャーやご家族の知識も豊富です。「ここは縦手すりで細いので、ここは横手すりで横は太く・・・」と初めから決めてしまう方もいます。「何で・・・」と聞くと「そう書いてあります。」という答え・・・。

手すりについては各メーカーも様々な形状の手すりを開発しており、利用する方に合わせて繊細な選択をする事が可能です。手すりの形状や太さは実際に掴んでもらって判断をします。手のとても大きなおじいちゃんが、細い手すりを選ぶ事もあれば、手の小さなおばあちゃんが、太い手すりが掴みやすいと答える場合もあります。信頼している理学療法士の先生によると、「その方が、どこで力が入りやすいかが大事」と言います。その方が長年過ごした環境によって変わるらしいです。長年鍬を握ってた方と、事務の仕事の方では、「握る」という感覚も違うという事です。また、リウマチを患っている方が、楕円形の手すりが良いとか、細いのが良いとかについても同じ事が言えるそうです。

私自身が「介護保険住宅改修」に携わる中で、最も多い工事は「手すりの取り付け」です。年間の取り付け箇所は200箇所を超えます。住まいる悠では年間100件位の工事が限界です。その内60~70%は「手すりの取り付け」となります。

1件で1箇所の所もあれば10箇所を超える所もあります。平均すると1件で5箇所位かと思います。その殆どを自分一人で行っておりますので、現在までの経験件数は3,000件以上です。それが多いのか少ないのかは別として、その経験の中には「アドバイザー」と呼ばれる市町村委託の介護保険住宅改修専門の相談員や作業療法士や理学療法士といった、リハビリスタッフの方達との連携も多く、様々なアドバイスや改修プランに沿って改修を行ってきた経験もあります。

しかし、相談員やリハビリスタッフのアドバイスや改修プランが「必ずしも正しいとは限らない」という経験も多くしてきました。1つのショッキングな経験として、

ある時、アドバイザーの指示に従い、トイレの入口に長さ30㎝の短い縦型手すりを取り付けました。高さは上部が1m30㎝、下が1mです。私は通常、60センチ位の長さの手すりを付けるようにしていたので、短すぎないか確認をしましたが、「立って使うだけだから-」とアドバイザーは30㎝の手すりをプランニングしました。(この自治体はアドバイザーの選定には逆らえません)

1ヶ月位が経ったある日、担当のケアマネジャーから電話があり、「夜中にトイレの前で転んで、朝まで立てなかった」という電話が入りました。その方は命に別状は無かったものの、真冬だったので低体温症で入院。

後になって「手すりに手が届けば立てたのに・・・」と家族やケアマネジャーから責められました。アドバイザーは「最終的には現場で判断して取り付けないと・・・」と逃げてしまいました。

こんな経験から、今でもご本人やご家族、アドバイザーやリハビリスタッフが短い手すりを希望した時は、この話をして確認をしております。

これ以外にも、浴室の浴槽横に斜めの手すりを付けて(付けさせられて・・・)転倒した件もあります。

そんな失敗?も含めて今日に至っております。今後も「とらわれない」プランニングを心掛けていきます。